相続財産調査は自分でもできますか?
1 相続財産の調査は遺産分割の前提
相続において遺産を分割する際には、相続人が誰かという点とともに、相続財産がどれだけあるかという点を確定することが必要不可欠です。
相続財産に何があるのか、また、その評価額がいくらなのかによって、相続財産の分け方や相続税の金額等も大きく異なり、適切に相続財産を調査、評価しないと後々相続人間でトラブルに発展する可能性があります。
仮に、被相続人が非常にしっかりした方で遺産についての記録をきちんと残していたり、生前から相続を見据えた財産の管理を専門家に依頼していたりするケースでは、相続財産の把握も容易だといえます。
しかし、相続人が遠方にしか住んでいなかったなどの理由で、どこに、どの程度の財産があるか分からないケースも非常に多いです。
この場合、相続財産に漏れがあると、一度まとまった遺産分割を再度、やり直す必要が出てきたり、追加で相続税を納めなければならなくなったりする可能性があります。
そのため、相続財産については、漏れなく調査する必要があります。
2 相続財産の調査方法
⑴ 不動産
土地や建物といった不動産がどこにあるかについては、毎年、役所から送られてくる固定資産税の納税通知書を確認することで、ある程度は把握することができます。
もっとも、固定資産税の納税通知書に記載されている不動産は、あくまで課税対象の物のみとなっているため、非課税や価額が低い物件は記載されないことがあります。
そのため、不動産がありそうな市町村役場に対して、固定資産税課税台帳(名寄帳)という書面を取得することで、非課税や価額の低い物件も把握することができます。
また、評価の算定方法としては、国税庁から公表されている路線価や、固定資産税の納税通知書等に記載されている固定資産税評価額、不動産会社が出す査定額や、不動産鑑定士が出す鑑定額などがあり、遺産分割か相続税の申告かなど、手続きの内容によっても、どの評価方法を用いるのかは異なります。
⑵ 預貯金
預貯金に関しては、通帳やキャッシュカード、各金融機関からの連絡書等があれば、どこの銀行に口座があるか分かり、その金融機関にて残高証明書を取得すれば、相続開始時点においての預貯金の残高が分かります。
もっとも、どの金融機関に口座があるかすら分からない場合は、亡くなった方のお住まいの最寄りの金融機関に直接確認するぐらいしか方法がなく、全ての預貯金を調査することができない可能性があります。
⑶ 株式や投資信託
株や投資信託については、証券保管振替機構に照会をかけることによって、亡くなった方がどの証券会社に口座があったのかを確認することができ、証券会社が分かれば、そちらから残高証明書を取得することで、株式や投資信託の内容が分かります。
3 弁護士には相続財産を調査するノウハウがある
相続を取り扱っている弁護士は、相続財産の調査のためのノウハウを常に磨いています。
そのような専門的な知識と経験に加え、弁護士には弁護士だけに認められている弁護士会照会を用いながら、預金や生命保険などの財産がないかを調査する権限もあります。
このような知識、経験、権限のある弁護士に依頼すれば、相続財産をもれなく把握できる可能性が高まりますので、相続財産調査は弁護士に依頼されることをおすすめします。
また、相続財産の調査とともに、遺産の分割協議や遺留分請求についても弁護士に依頼する予定なのであれば、あわせて依頼しておく方が二度手間をかけることなく、スピーディーに解決することができます。
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