相続にあたって不動産の評価を知りたいのですがどうすればよいですか?
1 相続において不動産の価値を把握することは非常に重要
不動産の価値を把握しておくことは、相続において非常に重要です。
例えば、遺産分割の場合において、適切に遺産分割をするためには、不動産の価値を把握しておく必要があります。
遺言書を作成する場合にも、各相続人が相続する財産の額や遺留分を計算するためには、不動産の価値を把握しておく必要があります。
反対に、不動産の価額を把握しておかないと、遺産分割や遺留分等で不利に扱われる可能性もあります。
その一方で、不動産の価格には、固定資産税評価額や路線価価格、査定価格など様々なものがあり、かつ、その価格にはばらつきがあるため、自分が行いたい相続の手続において、どの価格を使えばいいのかよく分からないという人も多いです。
そこで、以下では、不動産の評価額を知る方法についてご紹介したいと思います。
2 固定資産評価額とは
固定資産評価額とは、本来、固定資産税の課税額を決める基準として用いられている不動産の評価額です。
これは、「固定資産評価基準」にしたがって決められており、各市区町村がこの基準をもとに決めています。
固定資産の評価額は、市区町村から送られてくる課税通知書で確認できる場合がありますし、市区町村の課税担当の部署で不動産の評価証明書の取得で確認することもできます。
ただし、この固定資産税評価額が時価を反映しているかというと、そうではありません。
一般的には、固定資産評価額は、公示価格の7割程度となるように定められるとされており、土地の価値を把握するためには、固定資産評価額に0.7等の数字で割った額で時価を概算することで、おおよその時価として評価し、遺産分割協議の際の基準とすることもあります。
しかし、時価を反映していないことから、交渉の余地を生み出すことのできるところでもあります。
そのため、不動産相続の際にその評価額については、単純に公示価格の7割で計算すればいいということではないのです。
3 路線価価格とは
路線価価格とは、土地が面している道路の路線価を確認し、その値をもとに土地の面積や特性に基づいた必要な修正を加えて、計算した額をいいます。
路線価価格は、国税庁が路線価図として公開しており、これを確認することで調べることができ、その年の1月1日から12月31日までの間に相続、または遺贈がなされた年度のものを使用します。
なお、各年度の路線価は、以下の国税庁のホームページをご参照ください。
参考リンク:国税庁・財産評価基準書 路線価図・評価倍率表
路線価価格は、相続税や贈与税などの税金関係において、不動産(土地)の価値を把握する際に利用されるものであり、公示価格の8割程度となるように定められています。
このように路線価価格は、主に税金関係で用いられている評価手法であるため、弁護士の中にはこの評価方法に習熟していない者もいます。
しかし、相続を担当する弁護士にとって、路線価価格を把握せずに相続手続を行うことは危険です。
たとえば、遺言書の作成においても、ただ遺言書を作成したとしても、実際にその効力が生じた際には相続税が生じる可能性があります。
そのため、遺言書作成時点で相続税も考慮した遺言書としなければ、将来の相続時の紛争防止という側面を有する遺言書の役割を十分に果たす内容とすることはできません。
このように、たとえ相続税の申告をする依頼を受けているわけではないとしても、相続税を意識した遺言内容とする必要があるため、その内容を検討する際には、路線価価格を正確に計算することは必須のものといえます。
4 不動産の査定書
不動産業者が不動産の価値を査定する場合もあります。
不動産業者は、例えば不動産の売却を仲介する場合には、売出価格について、根拠を持ってその意見を提示することが必要であり、この根拠となるのが不動産の査定書です。
不動産の近隣の取引事例や公示価格・基準値標準価格等から、駅からの立地、日照などの条件によって必要な修正を加えたうえで査定額を出しますので、個々の土地の特性を踏まえた妥当な評価額となっている場合が多いといえます。
しかし、不動産業者によって考慮事項やその査定の能力、精度等は様々ですし、査定の際に考慮すべき事項を十分に考慮していない場合もあります。
また、不動産業者の査定書については、意図的に、高めや低めの金額で見積もられていることもあります。
そのため、不動産の査定書であるからといって、必ずしも妥当な評価額であるとはいえず、その内容を吟味し、他の不動産会社の査定書と比較するなどして、妥当な評価額を検討する必要がある場合もあります。
5 不動産鑑定士による鑑定
不動産の価値について、不動産鑑定士による鑑定を行うこともあります。
不動産について非常に詳細な事項についても、不動産鑑定士が調査したうえ、専門的な知識を持って検討をしたうえで鑑定をしますので、費用がかかるというデメリットはあるものの、他の評価額と比較すれば、もっとも正確に不動産の価値を把握することができるといえます。
ただし、そもそも不動産について、どのような目的・条件で鑑定を行うのか、例えば、共有持分について利用価値の視点から行うのか、取引価値の視点から行うのか、どのような評価手法によって鑑定を行うのか、いつの時点での不動産の評価額を鑑定するのかなどの点について、きちんと決めておかなければならりません。
ただやみくもに鑑定を実施すれば不動産の価値が分かり、結論が出るというわけではない点には注意しなければなりません。
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