弁護士による相続相談【弁護士法人心 名古屋法律事務所】

遺留分の放棄とはどのような場合に行うのですか?

  • 文責:弁護士 上田佳孝
  • 最終更新日:2023年7月3日

1 遺留分とは

遺留分とは、被相続人が自分の財産について、本来であれば全て自由に処分できるところ、一定の相続人に、一定の範囲で被相続人の財産を留保した権利のことです。

そして、その遺留分を侵害するような、遺贈、贈与、相続分の指定などが行われた場合に、その財産を得た受遺者や受贈者に対して侵害された(遺留分として留保されていた)分を請求するができます。

遺留分が認められた背景にはさまざまな事情がりますが、その1つは、相続制度は遺族の生活保障の側面を有するため、一定の本来その相続財産によって生活の保護を図るという側面を有します。

2 遺留分の放棄とは

遺留分の放棄とは、遺留分権者が遺留分について請求できないように放棄することをいいます。

あくまで遺留分の放棄であるため、相続人の地位を失う相続放棄とは異なり相続人としての地位は失わず、相続することはできます。

そして、遺留分権利者は原則として相続開始前では何ら具体的な請求権を有さないため、その権利を行使することはできませんが、原則遺留分の放棄は相続開始前でも可能です。

ただし、相続開始前に遺留分を放棄するためには、被相続人となる者の住所地を管轄する家庭裁判所に対し申立てを行う必要があり、家庭裁判所がその申立について許可をすることで、放棄をすることができます。

3 遺留分放棄を選択する事情①(遺産分割後の紛争予防)

遺産分割というと、法定相続人に平等になるように遺産を分けるという場合だけでなく、相続人の1人にその遺産を集中させるということもありえます。

例えば父親が死亡した場合に父親の財産を母親に財産をすべて残して生活を保護することを目的に、母親に全て相続させるとか、会社を経営していたときに、会社の土地は父親名義になっていた場合に、その土地を分割することなく、会社を継いだ長男に相続させるなどといった場合が考えられます。

もちろん、遺産分割は合意がされて初めてそのような不平等とも言える分割が可能になるわけですが、分割時には納得していても将来やはり遺留分は欲しい、という人が現れないとも限りません。

そうした事態を予防するために、遺産分割の内容に納得している内に遺留分を放棄してもらうことで、そのような紛争を避ける一助とすることができ、より自由度の高い遺産分割を行うことが可能になることがあるため、遺留分の放棄が利用される事情となります。

4 遺留分の放棄を選択する事情②(被相続人の意思を尊重する)

遺言書を作り、法定相続人以外の人に財産を残したい、あるいは一部の法定相続人にだけ財産を残すことを希望される方もいらっしゃいます。

理由は様々ですが、財産を残したい人が孫である場合や、疎遠になってしまった子には相続させず、生活の面倒を見てくれた子にだけ財産を遺すことを希望される場合などが考えられます。

このような場合に、単に遺言書を作るだけですと、事情を知らない遺留分を侵害された人が遺留分を請求し、本来であれば遺言者が自分の財産を与えたくないと考えていた人にまで財産が与えられることになってしまう場合があります。

そこで、遺留分をあらかじめ放棄してもらうために、生前遺言書を作る段階で、事情を説明し、遺留分を放棄してもらうことができれば、遺言者の希望に沿った相続が行われることが可能になる場合があるため、遺留分の放棄が利用される事情になるのです。

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