遺言書の効力
1 遺言書の効力が問題になるケース
遺言書が存在したとしても、必ずしも遺言書を作成した方の遺志が反映されるとは限りません。
遺言書の形式に不備があったために無効になったり、書いてある内容が不適切で無効になったりするケースがあるため、注意が必要です。
どういった場合に遺言書が無効になってしまうのか、以下で説明します。
2 遺言書そのものが無効になるケース
⑴ 遺言作成者の判断能力が低下している場合
遺言書を作成する際には、その遺言書の内容を理解するだけの判断能力が必要です。
しかし、すでに判断能力が低下している人に対して、特定の人が有利になる内容の遺言を作成させるというケースがあります。
そういったケースでは、後々に遺言が無効である旨の裁判が提起されることがあります。
裁判では、遺言書作成時の医師の診断書や、介護記録などから、遺言書を作成した方の理解力などを証明することになります。
仮に、遺言を作成する時点で、遺言書の内容を理解できていなかったと判断された場合は、遺言書が無効になってしまいます。
⑵ 遺言書のルールを満たしていない場合
特に手書きの遺言書で問題になりますが、遺言が有効に成立するためには、いくつかのルールを守らなければなりません。
ルールの1つとして、遺言書を作成した日付を必ず記載する必要があります。
例えば、遺言を作成した日付として「令和6年9月吉日」と記載した場合、日付を正確に特定することができないため、遺言は無効となってしまいます。
また、原則として手書きで作成しなければならないところを、パソコンなどで作成した場合も、遺言書は効力が発生しません。
ただし、手書きの遺言であっても、財産目録についてはワープロで作成することが認められています。
3 内容が不適切で遺言書の効力が無効になるケース
⑴ あいまいな表現を使っている場合
例えば、「老後のお世話をしてくれた人に、全財産を相続させる」という遺言書があった場合、誰が財産を相続するのかが不明確です。
「老後のお世話をしてくれた人」とは、同居していた相続人を指すと解釈することもできますが、介護施設の担当者を指すとも解釈することができます。
こういったケースでは、遺言書が無効になる可能性があるため、遺産を渡す人を特定できるよう、遺言書に明確に記す必要があります。
⑵ 万が一のことを想定していない場合
例えば、「全財産を長女に相続させる」という遺言書があったものの、先に長女が亡くなった場合、遺言書の内容を実現することはできません。
そのため、この遺言書は無効になります。
こういった事態を防ぐためには、遺産を渡す人が先に亡くなった場合を想定した遺言書を残す必要があります。